ウホウホ日記

多趣味なゴリラのたまに役立つつぶやき

「先生の白い嘘」を読んだ。

  今更ながら。

うん、グッときました。娘が高校生くらいになったら読ませたい。

 

  僕は美鈴さんに共感出来るほどの体験はしたことないけど、ほんの少し、近いニュアンスの体験をしたことがある。まあ良くある話かもしれないけど、中学の時に学校のヤンキーにボコボコにされた。ちょっとしたことで揉めて、トイレにつれていかれて、デッキブラシでボッコボコ。

  中学の頃の僕は、幼少期にやってた器械体操のおかげか基本的に身体能力が高かったからスポーツは何でも上手に出来たし、成績もたいして勉強しなくても上の方にいた。音楽や美術なんかも得意だった。  まあ自分で言うのもなんだけど、何をやっても大抵の人より上手に出来る、スペック高めなタイプだった。  背も低いし顔も良くないからモテなかったけど笑

  で、そんな自分だったから、軽めの厨二病な時期なことも相まって、なんというか、万能感?の様な感覚を持っていた。本気でやれば俺はなんだって出来るだろう、みたいな思い込み。

  そんな時、ヤンキーにバチバチにいかれた。子供のケンカみたいなちょっとした殴った殴られたくらいしかした事がなかったけど、なぜかケンカになっても俺はそこそこやれると勘違いしていた自分は、武器を持ったドヤンキーに攻撃的な敵意を向けられた時、萎縮しきってしまってロクに声を出すことも出来なかった。とても怖かった。何も出来なかった。

 

  もともと大した揉めごとでもなかったからか、ヤンキーの方も徹底的には痛めつけてこなかったので大きな怪我にはならなかったが、それは、それまで万能感を持っていた僕の自尊心を大きく傷つけるには十分な出来事で、それから僕は、汗をかくととても頭が痒くなる様になった。もう、とてもじゃないけど堪えられない様なレベルの痒さ。  確か病院にも行った様な気がするけど、ストレスとかなんとか言われた気がする。まあ、その通りですね笑

 

  強い暴力を受けたり、他人に理不尽に、力ずくで捩じ伏せられると、人間は自尊心が傷つき、自己肯定感が失われる。これは経験しないと分からないと思う。美鈴さんは、自分の手が、足が、髪の毛一本一本までが自分のものでなくなって、色々な感情が色彩を失った。僕は、ここまでの感覚は共感は出来ないけど、ぼんやり想像は出来る。あの程度の暴力を受けただけで、自律神経の異常まで出たんだ。もっと激しい、精神まで傷つけようとする明確な悪意をもった暴力を受けたら、そんなことになってもおかしくないだろうと思う。

 

  「先生の白い嘘」、美鈴さんが自分を取り戻す過程、登場人物それぞれの人間性や心の動きの描写、とても見事だった。娘が大きくなったら、ぜひ読んでほしい。人間の心は、思っているより弱い。自己肯定感を失うのは本当に危険だ。青豆さんも言ってたし。

 

  借りて読んだけど買おうと思います。おもしろかった。鳥飼茜さんの他の作品も読んでみよう。